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甲状腺がん(悪性腫瘍)には組織型や性質が異なる6つのがんがあります

甲状腺にできる悪性腫瘍(がん)は、罹患率の男女比が1対6と、圧倒的に女性に多いのが特徴です。

 

6つのタイプ(組織型)があり、同じ甲状腺がんといっても、タイプによって性質は大きく変わります。治療法もそれぞれ異なり、再発率や生存率にも差がありますので、どのタイプなのか、きちんと診断するこ
とが重要です。

 

甲状腺がんは、30〜40歳代の女性に多く見られ、ほかの部位にできるがんとくらべると年齢が若いのが特徴です。

 

また、ほかのがん(胃がん、乳がんなど)が、若い人ほど悪性度が高く進行が速いのにくらべ、甲状腺がんは高齢の人のほうが、悪性度の高い未分化がんが多くなっています。

 

さらに、たちがよく治療後の経過もよい乳頭がんでも、高齢の患者さんの場合は治りがよくない傾向があります。

 

 

「乳頭がん」はもっとも多く全体の約90%を占めます

日本人がかかる甲状腺がんの約90%は乳頭がんで、海外にくらべても高い割合を占めます。

 

好発年齢は30〜60歳ですが、各年齢層に見られます。

 

乳頭がんは、早い時期は良性腫瘍と同じように、ただ首にしこりがあるだけです。進行はゆっくりで、何年たってもほとんど変化がなく、たちのよいがんといえます。

 

しかし、ある時期から急速に進行し、悪性度の高い未分化がんに近い性質を持つことがありますので、油断はできません。

 

進行すると、周囲に浸潤して、気管や神経、食道を圧迫するようになります。また、リンパ節への転移もよく見られます。

 

中には、先にリンパ節がはれて目立つようになり、調べてみてはじめて甲状腺がんだったとわかるケースもあります。大部分の乳頭がんは手術で治り、治療後の経過もよく、生存率は95%です。

 

 

「濾胞がん」は、良性腫瘍との鑑別がむずかしい

瀘胞がんは乳頭がんに次いで多いがんで、発生頻皮は約5%です。濾胞がんの問題点は、触診や超音波(エコー)、細胞診では、良性の腫瘍と鑑別がつきにくいところです。現状では、確実な術前診断方法はありません。

 

症状としては、首にしこりがあるだけという場合が多い、比較的おとなしいがんです。

 

乳頭がんとくらべ、周囲のリンパ節への転移は少ないのですが、肺や骨など、離れた部位へ転移する(遠隔転移)傾向があるので、要注意です。

 

長年、良性の結節性甲状腺腫として経過観察しているうちに、遠隔転移をきっかけに濾胞がんとわかるケーススもあります。

 

そのため、瀘胞がんは、初期の段階で骨などへ転移しやすい状態と診断されると、最初から甲状腺の全摘手術が行われます。

 

 

「髄様がん」の3分の1は遺伝が原因で起こります

髄様がんは、甲状腺がん全体の1〜2%ほどで、まれながんです。

 

髄様がんには、ほかの甲状腺がんにはない特徴が2つあります。一つは、髄様がんができる細胞です。甲状腺には、甲状腺ホルモンをつくる細胞だけではなく、カルシトニン(血液中のカルシウム値を下げるホルモン)をつくり出す「C細胞」というものがありますが、髄様がんは、このC細胞ががん化したものです。

 

もう一つの特徴は、遺伝性です。髄様がんのうち、3分の1は遺伝が原因となって起こります。遺伝性の髄様がんの人には、生まれつき遺伝子に異常があることがわかっています。そのため、現在では、遺伝子検査で、がん発生の遺伝子を受け継いでいるかどうかが診断できるようになっています。

 

 

遺伝性のない散発型の髄様がん手術は、甲状腺の一部切除でいいのですが、遺伝性の髄様がんは全摘手術となります。

 

 

「低分化がん」は分化と未分化の中間

2004年にWHOによって設けられた、新しい組織型です。予後が良好な分化がん(乳頭がんや濾胞がん)と、予後不良な未分化がんとの間に位置づけられる、中間的ながんです。

 

分化がんにくらべると、再発率や死亡率が高く、未分化がんへ移行する場合もあるため、注意深い経過観察が必要です。

 

 

「未分化がん」は悪性度の高い危険ながん

甲状腺がんの中では1%程度で、発生する割合は低いのですが、非常に悪性度の高いがんです。ほかの甲状腺がんとはまったく性質が異なるがんで、60歳以上の高齢者に多く、若い人には見られません。

 

長年存在していた分化がん(乳頭がんや濾胞がん)が、突然未分化がんに変化し、腫瘍が急速に大きくなります。周囲の臓器への圧迫症状も強くあらわれ、ほかの甲状腺がんにはない、体が熱っぽい感じや、疲労感があります。

 

そして、がんが増殖するスピードは、あらゆるがんの中でもっとも速いといわれます。

 

治療は、抗がん剤や放射線療法を行います。しかし、残念ながら、どんなに治療をしても効果は期待できず、平均生存期間は約6カ月(4〜12カ月)です。

 

 

「悪性リンパ腫」は橋本病から発生します

悪性リンパ腫の男女比1対3〜4で女性に多く、患者さんの平均年齢は60歳代です。中高年の女性に好発します。甲状腺悪性腫瘍のうち1〜5%の割合です。

 

悪性リンパ腫は、本来ならリンパ腺にできるがんですが、橋本病があると、それを背景に甲状腺に悪性リンパ腫が発生することがあります。甲状腺全体が急に大きくなり、放置すると気管を圧迫して窒息をまねくことがあります。

 

治療は、抗がん剤と放射線療法が中心で、過人な手術はあまり意味がありません。早く見つけて治療をすれば、予後は良好です。

 

 

甲状腺がん(悪性腫瘍)の治療方法

「手術」は甲状腺切除とリンパ節郭清が基本です

このところ、健診での超音波(エコー)検査の普及や、穿刺吸引細胞診など検査技術の進歩によって、1cm以下の微小がんが見つけられる頻度が高くなっています。

 

微小がんについては、多くの場合症状がなく、生活に支障も出ないため、手術をせずに経過観察をつづけるだけでよい、という意見があります。

 

しかし、微小がんのすべてがおとなしいがんとは限りません。リンパ節への転移や、遠隔転移をする場合もあり、悪性度が高いがんもあります。これらを確実に見つける方法はまだありません。

 

乳頭がんの治療法としては、いまのところ、手術が最善の方法です。

 

切除する範囲は3段階
  • 葉切除、または峡葉切除(甲状腺の片葉を切り取る)
  • 準全摘(甲状腺の大半を切り取り1g以下にする。副甲状腺や反回神経は残す)
  • 全摘(甲状腺のすべてを切除する)

 

頸部リンパ節郭清

甲状腺切除とあわせ、転移の可能性を考慮して、周囲のリンパ節を脂肪組織ごと摘出する「頸部リンパ節郭清」を行います。甲状腺がんのほとんどはゆっくり進行しますので、リンパ節に転移していたとしても、この郭清によって取り切れます。

 

主に術後に薬を服用

腫瘍が大きくなるのを抑えるため、手術前に、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を服用する場合もありますが、多くは手術後に、ホルモン不足を補ったり、再発を防ぐために服用します。

 

甲状腺を全摘した場合は、甲状腺ホルモンがつくれなくなりますので、一生、甲状腺ホルモン剤を服用しなければなりません。

 

進行がんなどの治療には「アイソトープ療法」

乳頭がんや濾胞がんは、甲状腺の濾胞細胞(甲状腺ホルモンをつくる細胞ヽが、がん化したものです。

 

したがって、濾胞細胞には、甲状腺ホルモンの原料となるヨウ素を取り込む性質があり、転移したがん細胞にもこの性質が残っていることがあります。この、ヨウ素を取り込む性質を利用するのが、「アイソトープ(放射性ヨウ素)療法」です。

働き

全摘手術のあとに、アイソトープ(町)のカプセルを飲むと、アイソトープは転移巣に集まり、β線を出して、内部からがん細胞を破壊します。β線は飛ぶ距離が短いため、まわりの組織に悪影響をおよぼしません。

適応

肺や骨へ転移している場合や、手術で病巣を取り切った場合でも、腫瘍が進行がんであったケースなどに行われます。遠隔転移の多い濾胞がんの再発治療としても効果があります。

適応外

転移巣にヨウ素を取り込む力がない場合は、アイソトープ療法の効果は期待できません。

 

また、髄様がんは、濾胞細胞とは性質の異なるC細胞ががん化したものなので、ヨウ素を取り込む力がありません。未分化がんにも効果は期待できません。

 

 

手術で取り切れない場合は「放射線」や「抗がん剤」で

がんは、一般に、細胞の分化度が低いほど、分裂・増殖のスピードが速く、悪性度も高くなります。したがって、未分化がんほど放射線療法や化学療法が有効です。なぜなら、放射線や抗がん剤は、細胞の分裂や増殖過程を阻害するからです

 

乳頭がんのような分化がんは、放射線への感受性が低いので、放射線療法は効果が期待できません。

 

一方、未分化がんの場合には、上記の理由で、放射線外照射療法や抗がん剤療法が有効です。また、進行がんでは、甲状腺全摘術のあとに残っているがんが大きくならないように、手術と併用して使われます。

 

未分化がんは、手術をしても1年後には、90%以上の患者さんが死亡してしまう、非常に治療のむずかしいがんです。それでも、長期生存している患者さんもいます。このような患者さんの多くは、手術でがんを完全に摘出したあと、さらに抗がん剤と放射線療法を併用しています。
また、悪性リンパ腫も、手術よりも、抗がん剤療法と放射線外照射療法を組み合わせる治療がもっとも適しています。

 

 

甲状腺がんのQ&A

 

良性の腫瘍が悪性の腫瘍(がん)に変わることはないのでしょうか?

腺腫や腺腫様甲状腺腫ががんに変わることはありません。ただし、がんと合併することはあります。それを、良性のものが悪性のがんに変わったとかん違いする人がいますが、良性腫瘍が悪性腫瘍(がん)に変化することはありません。

 

甲状腺がんの治療は手術以外に方法はないのでしょうか?

甲状腺がんは、ほかの臓器のがんと異なり、比較的おとなしい性質のがんです。しかしその反面、抗がん剤や放射線があまり効かないがんでもあります。

 

したがって、甲状腺がんを治すには、手術が最善の方法であるといえます。

 

手術をすると、どんな合併症が起こるのでしょうか?

甲状腺がんが早期の場合は、手術で切除する範囲も少なく、合併症が起こることはありません。

 

がんが進行して広範囲の手術をした場合に起こりやすい合併症としては、声帯のマヒや、副甲状腺機能低下症があります。

 

副甲状腺は、血中のカルシウムの代謝を調節するホルモンを分泌していますので、それが切除されると、血中カルシウムが低下して、テタニー症状(手指や口の周囲のしびれ)が起こることがあります。テタニー症状は、カルシウム製剤やビタミンD3製剤を内服すれば改善されます。

 

手術後、再発することはありませんか?

再発はまったくないとはいえませんが、ほかの臓器のがんとくらべるとずっと少ないといえます。もし再発した場合でも、もう一度手術をして治すことができます。

 

5年前に手術をした乳頭がんが再発しました。甲状腺がんは治りやすいがんだと聞いていたので、とても不安です。

確かに甲状腺がんは性質のおとなしいがんですが、まれに再発することがあります。

 

乳頭がんの場合は、ほとんどが局所(甲状腺)での再発で、肺や脳などへ転移することはめったにありません。ですから、再発したといっても、それほど心配することはありません。再手術で腫瘍をきちんと切り取れば、完治します。

 

なお、術後は、1年から1年半の間隔で、超音波(エコー)検査と細胞診による定期検査を必ず受けるようにしましよう。早く発見すれば、仮に再々発したとしても、決してこわくはありません。

 

 

 

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