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橋本病とは甲状腺に慢性の炎症が起こる病気です

自己免疫が炎症を起こすが多くの場合は機能は正常です

橋本病は「慢性甲状腺炎」ともいわれ、その名の通り甲状腺に慢性の災症が起こる病気です。

 

炎症というと、通常は、外から侵人してきた細菌やウイルスなどに対して、体を守るために免疫細胞が起こす防御反応のことをさします。このような炎症には、発熱や痛み、はれなどの症状がともないます。

 

しかし、橋本病の炎症は、細菌やワイルスの感染で起こるのではなく、自己免疫によるものなので、発熱や痛みなどはありません。

 

そもそも橋本病は、症状があらわれにくい病気です。血液の中に甲状腺細胞を破壊するリンパ球があっても、甲状腺が本来の機能(ホルモンの合成・分泌)を保っている間は、症状が出ないのです。

 

橋本病の人のうち、症状をともなう機能低下症になる人はわずかです。

 

機能低下は4〜5人に1人です

橋本病になると、甲状腺機能が低下していきますが、その大まかなプロセスを見てみます。

 

はじめは、本来なら免疫の働きの中心となるリンパ球が甲状腺に入り込み(浸潤)、攻撃し傷つけて発病に至ります。リンパ球にはTリンパ球とBリンパ球があり、攻撃をするのはTリンパ球です。

 

一方、Bリンパ球は甲状腺にあるたんぱく成分に対する自己抗体をつくります。Tリンパ球により甲状腺細胞が破壊されると、下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)がふえ、ホルモンをつくるよう促します。
その刺激を受けて甲状腺が働くため、ホルモン量はほとんど減りません。この段階では、まだ症状はあらわれず、「潜在性」の段階です。

 

リンパ球の浸潤で攻撃や破壊が進むと、炎症が起こって「慢性甲状腺炎」の状態になります。甲状腺全体が大きくかたくはれてきます。

 

さらに破壊が進むと、甲状腺の働きが落ちてきます。ホルモンの合成・分泌ができなくなるため、血液中のホルモンが不足して、機能低下症の症状があらわれてきます。

 

これが、橋本病の大まかなプロセスですが、すべての人がこうなるとは限りません。橋本病は、一人一人違うといえるほど、人によってさまざまな経過をたどります。

 

橋本病になっても、機能低下症までに至る人は、大体4〜5人に1人といわれています。

 

また、橋本病という名前は、1912年(大正元年)にこの病気についてはじめて論文を発表した橋本策博士にちなんでつけられました。

 

 

橋本病とバセドウ病の違いと共通点

橋本病もバセドウ病も、自己免疫によって発病します。同じ甲状腺という臓器で、自己免疫によって起こる病気が、一方では機能が亢進し、もう一方では低下するのはなぜなのか、そのしくみを見ていきます。

 

自己免疫の標的が異なり機能が亢進したり低下する

同じ自己免疫による病気といっても、橋本病とバセドウ病ではターゲットが異なります。

 

バセドウ病の場合は、甲状腺細胞にある甲状腺刺激ホルモン(TSH)の受容体が標的になります。

 

この受容体を異物とまちがえて、それを排除する自己抗体(TRAb)ができ、TSHにかわって甲状腺のTSH受容体を刺激するのです。そのため、ホルモン量の調節ができなくなり、ホルモンが過剰になって甲状腺機能亢進症になるわけです。

 

一方、橋本病では、甲状腺の細胞内にあるたんぱく成分が、自己免疫の標的になります。つまり、甲状腺内の、サイログロブリンやペルオキシダーゼといったたんぱく成分に対して、それぞれTgAbやTPOA
bという自己抗体ができます。

 

こうした攻撃を受けても、甲状腺は余裕のある臓器なので、急にホルモンの合成・分泌が止まることはありません。しかし、攻撃によって炎症が進むと、甲状腺細胞が破壊され、ホルモンがつくられなくなるので、しだいに機能低下症の症状があらわれてきます。

 

病気の背景には、共通の遺伝的因子が考えられます

自己免疫が、橋本病では甲状腺を破壊するように働き、バセドウ病では刺激するように慟く、その違いがなぜ起こるのかについて、理由はいまだによくわかってはいません。

 

いずれにしても、橋本病とバセドウ病では、自己免疫の働き尨が異なり、症状もまったく逆にあらわれます。

 

ただし、病気の背景には、共通のものがあると考えられます。それは、どちらにも遺伝性の因子や環境因子がある点です。

 

橋本病の患者さんには、血縁者にバセドウ病や橋本病の人がいるケースがしばしば見られます。家系に甲状腺疾患の人が多いということは、遺伝とのかかわりが考えられるのですが、橋本病はバセドウ病ほど遺伝性がはっきりしていません。

 

たとえ甲状腺の病気になりやすい体質があったとしても、橋本病は症状があらわれにくいため、気がつかないままでいるケースも多いのではないかと考えられます。

 

また、橋本病とバセドウ病とのつながりでは、もう一つ重要なものがあります。ほとんどのバセドウ病の患者さんが、はじめから、すでに橋本病の自己抗体であるTgAbやTPOAbの両方、あるいは片方を持っているのです。そのため、バセドウ病が寛解しても、数十年後に甲状腺機能低下症になる人がいます。

 

20〜50代の女性に多い橋本病

橋本病は、男女比が1対10〜20と、圧倒的に女性に多い病気で、成人女性の10〜30人に1人という高頻度で見られます。罹患年齢はバセドウ病より高く、20〜50代に多くなっています。

 

甲状腺疾患の家族がいる人(特に女性)は、なりやすい体質を持っていると考えられますので、たとえ症状がなくても、妊娠時や、40歳を過ぎたら、甲状腺の機能検査を受けておくことをおすすめします。

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