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バセドウ病における手術による治療は最も古くからある方法で効果が早く出ることがメリットです

バセドウ病の手術は、抗甲状腺薬やアイソトープ治療よりもずっと古くから行われている治療法です。

 

手術は、甲状腺ホルモンを必要以上につくってしまう甲状腺を切り取るのですが、方法は2種類あります。一つは、ホルモンを完全につくらせないようにする全摘(準全摘)術。もう一つは、ほとんどつくらせない
ようにする亜全摘術です。

 

手術治療の長所は、ほかの2つ(抗甲状腺薬とアイソトープ治療)とくらべ、早く確実に効果が得られるところです。実際、高い治療成績を上げています。

 

しかし、最近は、病気が早く発見されるため、首のはれ(甲状腺腫)が小さい患者さんがふえています。切除するより、薬で治療するほうが適しているため、手術は減っています。近年は、手術で治療する患者さんは、全体の5%程度です。

 

 

亜全摘術と全摘術その違いと最近の方向

亜全摘から全摘へ

手術による治療が目標とするのは薬を飲まなくても甲状腺機能が正常になることです。そのため、かつては甲状腺を少し残す(ホルモン分泌の機能を残す)亜全摘術が主流でした。現在も、亜全摘術を標準術式として採用している医療機関は数多くあります。

 

しかし、亜全摘術でどれだけの甲状腺を残せばよいのか、適正な重量について長年にわたって研究・検討されてきましたが、いまだ確定的なものは出されていません。

 

さらに、最近では、手術以外の治療法では明らかな効果が見られない難治性の患者さんが多くなっています。このようなケースは、亜全摘術では再燃(病気が再び進行しはじめること)することが多いのです。

 

再燃を避けるためには、残す甲状腺の範囲を小さくします。すると、結局は機能低下症になります。亜全摘術をしても、現状では、機能が正常になることは非常に少ないのです。

 

そこで、現在では、手術を選択する患者さんには全摘(準全摘)術がすすめられています。

 

ただし、患者さんは納得して手術を受けることが大切です。全摘(準全摘)か、亜全摘にするか、担当の医師とよく相談して決めるようにしてください。

 

手術後は甲状腺ホルモン剤を使用

甲状腺を全摘(準全摘)すると、ホルモンがつくられなくなるため、生涯にわたって甲状腺ホルモン剤を飲む必要があります。

 

一生涯、薬を飲むのは大変と思う人がいるかもしれません。しかし甲状腺ホルモン剤は1日1回の服用ですみ、価格も安価です。サプリメント感覚で飲めます

 

全摘術+甲状腺ホルモン剤で治療するメリット
  • 甲状腺ホルモンが変動しなくなりますので、体調が安定します。
  • 薬の副作用は、ほとんど皆無です
  • 薬は妊娠中でも安心して飲めます
  • ひんぱんに血液検査を行う必要がなくなります。
  • 薬は、長期の処方が可能です。
  • 専門医に通院しなくても、かかりつけの医師のところで処方してもらえます。

 

 

手術時間は1〜2時間入院期間は1週間です

手術治療の大まかな流れを見ていきましょう。

 

入院の前

甲状腺の機能が亢進したまま手術をすると、症状が急に悪化することがあります。そのため、入院前に、抗甲状腺薬、あるいはヨウ素剤などを使って、甲状腺の機能を正常にしておきます。入院してからも、甲状腺機能を抑える治療をつづけます。

 

入院

入院1日目

血液検査、心電図、胸部レントゲン検査、超音波(エコー)検査などの検査を行います。

 

入院2日目もしくは3日目

手術は入院の2、3日後に行います。当日は朝から絶食。手術は1〜2時間で終了します。手術後は食事だけでなく、水分も禁止になります。

 

手術後1日目

手術の翌朝には、食事をとれるようになり、トイレや洗面にも歩いて行けるようになります(歩行開始)。血液検査を行います。

 

手術後2日目

抜糸をし、声帯検査を行います。

 

手術後4日目

血液検査を行います。

 

手術後7日以内

経過にもよりますが、大体、手術後7日以内には退院できます。

 

自宅療養〜職場復帰

退院後1〜2週間は自宅で療養してから、職場や学校へ復帰します。1カ月後には、ふつうの生活ができるようになります。

 

 

手術治療が適しているのはこんな人

甲状腺のはれ(甲状腺腫)が大きい人

甲状腺のはれが大きすぎて、抗甲状腺薬を服用しても小さくならない場合は、手術がすすめられます。

 

抗甲状腺薬をきちんと服用しているのに効果が見られない人

抗甲状腺薬の服用後2年が経過しても、なかなか改善が見られない場合、手術は次の治療の選択肢になります。

 

抗甲状腺薬で、重い副作用(無顆粒球症や肝機能障害など)が出た人

無顆粒球症など重い副作用が出た場合、抗甲状腺薬はただちに中止する必要があります。バセドウ病の治療は薬とは別の方法がすすめられ、手術も選択肢になります。

 

腫瘍(甲状腺がんなど)の合併が見られる人

甲状腺腫そのものは良性ですが、そこに悪性腫瘍が合併した場合は(疑いがある場合も)、切除手術を検討する必要があります。

 

TRAb(自己抗体)の値が高く、早期の妊娠を希望している人

TRAbの値が高いまま残っていると、妊娠中に胎児に悪影響が出る場合があります。全摘術は亜全摘術にくらべ、TRAbがすみやかに下がりますので、近い将来出産を希望している人には安心です。

 

重いバセドウ病眼症のある人

バセドウ病眼症には、抗甲状腺薬の治療で機能が正常になればよくなるものもあります。しかし、機能亢進ではなく自己免疫が原因の眼症もあります。この場合、薬ではよくならず、アイソトープ治療も眼
症を悪化させたり、新たに発病する危険性があります。そのため、手術がすすめられます。

 

早い寛解を希望している人

抗甲状腺薬も、アイソトープ治療も、寛解までには時間がかかります。勉学、結婚、就職、海外への留学、転勤などのため、早く治したい人には手術がすすめられます。

 

 

手術による治療の注意点

手術後、病気が再燃しても再手術はできません手術後にバセドウ病が再発することは、全摘(準全摘)術では起こりません。

 

一方、亜全摘術を行ったあとは、機能亢進症がっづいたり、いったんおさまっても再発することがあります。この場合、2回目の手術をすることはありません。最初の手術による癒着があり、合併症の危険性が高いからです。

 

そのため、治療は、抗甲状腺薬の服用か、アイソトープ治療になります。抗甲状腺薬を服用する場合、機能亢進症は手術前とくらべて軽くなっていることが多いので、薬の量も手術前よりは減らせます。
手術をしたことはムダにはなりませんし、薬によって回復し、服用をやめられる場合もあります。

 

合併症が起こっても重大なことにはなりません

バセドウ病の手術は、技術が進歩していますので、合併症が起こることは非常に少なくなっています。しかし、まったくないというわけではありません。甲状腺の周囲には、さまざまな臓器があり、これらが手
術によって傷つくことがあるのです。 仮に合併症が起こったとしても、重大なことにはならないので、心配しすぎないようにしてください。

 

嗄声(させい、かれ声)

甲状腺の背面には、反回神経という細い神経が走っています。声門を開いたり閉じたりする筋肉運動をコントロールする神経で、この神経が傷つけられると、声帯の動きが悪くなり、声がかすれたり、非常にまれですが、声が出なくなることもあります。

 

また、気管の近くをいじったことによるマヒで、一時的に声がかすれることがあります。一過性のものですので、2〜3カ月すれば治ります。

 

喉頭浮腫

甲状腺はもともと血管に富んだ臓器ですが、特にバセドウ病では血流量がふえています。手術では100〜200mlほどの出血量がありますが、この出血が傷の内部にたまり、気道を圧迫して喉頭浮腫(むくみ)を起こすことがあります。

 

出血はまもなく止まりますが、止まらない場合は、短時間の再手術を行うこともあります。後遺症を残すことは、ほとんどありません。

 

テタニー症状

甲状腺の背面の左右上下には、合計4つの副甲状腺があり、ここで分泌される副甲状腺ホルモンは、血液中のカルシウム量を一定に保つ働きをしています。

 

バセドウ病の手術では、副甲状腺はそのまま残るよう工夫をしますが、手術の操作で副甲状腺への血流が悪くなったり、甲状腺といっしょに切除することがあります。

 

そのため、術後は、一時的に副甲状腺ホルモンの分泌が低下して、顔面がこわばったり、手足がしびれる「テタニー症状」があらわれることがあります。
テタニー症状の治療は、カルシウムの点滴をしたり、カルシウム剤とビタミンD剤を服用します。

 

 

傷あとは、数年後には目立たなくなります

バセドウ病の手術をすると、かつては首の傷あとが目立ちました。 しかし、現在は、首のつけ根のネックレスがかかる位置を、皮膚にそって横に切除します。

 

切開した傷は、表面に糸が出ないような縫い方をしますので、順調に経過すると、数年後にはしわのようになり、ほとんど目立ちません。気になる場合は、ネックレスなどで隠せます。

 

なお、ケロイド体質の人は回復に時間がかかりますので、手術前に医師に伝えてください。

 

 

手術をすれば、その後の治療は必要なくなるのでしょうか?

手術による治療は、うまくいけば、薬とはまったく縁が切れて、治療の必要はなくなります。ただし、100%そうとはいい切れません。

 

手術をした人のうち、10%前後は機能亢進症が再発するといわれていますこれでも抗甲状腺薬よりはずっと少ないのですが、ゼロではありません。再発するのは、亜全摘の場合に、切除が不十分で、残された甲状腺組織が大きかったり、残した部分が再び腫大するケースです。

 

取り残した甲状腺の量が多いと機能亢進症が再発し、少ないと機能低下症になります。残念ながら、患者さんごとに適正な甲状腺の量は異なるため、残すべき適正な量を手術前に予測することは困難です。

 

再発しても、最初の手術による癒着があったり、合併症を起こすなど、むずかしい問題が多いため、再手術はできません。この場合は、抗甲状腺薬を服用するか、アイソトープ治療を行うことになります。

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