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放射性ヨウ素が甲状腺を破壊してホルモンを作らなくさせます

手術より手軽で薬より早く効果が出ます

ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料になる物質で、体内に入ると甲状腺に集まる性質があります。

 

アイソトープ治療は、ヨウ素のこの性質を利用する方法です。放射線を出す機能を持ったヨウ素を、甲状腺に取り込ませて、ホルモンをつくる場所(甲状腺)を破壊して小さくするのです。

 

治療に使用するのは、ヨウ素131という種類のアイソトープでカプセルに入っています。

 

このカプセルを服用すると、ヨウ素131は放射線(べータ線)を発して甲状腺細胞を少しずつ破壊していきます。細胞の数が少なくなりホルモン合成が抑えられるので、症状がおさまってきます。甲状腺のはれも、徐々に小さくなっていきます。

 

 

アイソトープによる治療の長所は効果がはっきり出る点で、治癒率は60〜70%とされています。手術ほど完全に治らない場合もありますが、手術より手軽にできます。また、抗甲状腺薬よりも早く治り、いったん治ると再発はめったになく、副作用もありません。

 

 

治療のため、食事を制限し抗甲状腺薬の服用もやめます

アイソトープ治療のための手順を段階を追って見ていきましょう。

 

治療前の摂取率検査

治療のためには、その人の甲状腺がどのくらいの量のヨウ素を取り込むか、測定する必要があります。取り込む量は、人それぞれに異なるからです。そこで、ヨウ素の摂取率や効果がどれほど持続するかを測定します。また、甲状腺の重量なども測定します。これらの測定結果をベースに、その人に合った放射性ヨウ素の量を計算します。

 

治療前の準備

治療の1週間前

アイソトープ治療に使われる放射性ヨウ素は、通常の食事に含まれるヨウ素とくらべると、ごく微量です。
そのため、ふつうに食べていると、食物中に含まれているヨウ素のほうがたくさん甲状腺に吸収されてしまって、放射性ヨウ素が十分に取り込めなくなります。そこで、治療の前後は、ヨウ素を含む食品を控える必要があります。ヨウ素の制限が不十分な場合は、治療の効果も上がりません。

 

ヨウ素を制限する食事は、治療の1週間前からはじめます。また、ヨウ素を含む食品だけでなく、抗甲状腺薬も放射性ヨウ素の取り込みを抑えてしまうため、一定期間、薬の服用をやめます。薬も、治療の1週間前から中止します。

 

治療用の放射性ヨウ素を飲む

治療は、専用の放射線管理室内で、アイソトープの入ったカプセルを水で飲むだけで終了です。

 

抗甲状腺薬を再開

治療の5日後

抗甲状腺薬を、再び飲みはじめます。ヨウ素制限食もこの日までで、ふつうの食事に戻せます。

 

経過を見る

治療後1年程度

服用したヨウ素131は、ゆっくり作用します。ふつうは、ホルモンの値が低下するまでに1〜2カ月かかります。さらに、治療効果があらわれるのは、半年ほどあとです。甲状腺の機能が大きく変化することもあります。そのため、治療後1年くらいは経過を見る必要があります。

 

 

アイソトープ治療の際の注意点

安全性は認められていますが受けられない人もいます

アイソトープ治療は、1945年ごろ米国ではじまり、日本では1955年ごろより行われるようになりました。長い経験を経て、安全で有効な治療法と認められていますが、それでも放射線を使うことを心配す
る人もいるでしょう。

 

まず、発がん性(甲状腺がんや白血病)への不安です。これは、まったく心配ありません。アイソトープ治療を受けた人と受けない人とのがん発生率を調べても、差がないことが確かめられています。

 

ほかの臓器への影響もありませんアイソトープが放つ放射線(ベータ線)はごく弱く、体内最大飛距離は2mmです。肺、脳、卵巣(精巣)などの重要な臓器に、べータ線が届くことはありません。

 

ただし、次のような人はアイソトープ治療を避けなければなりません。

 

治療を受けられない人
  • 妊娠中の人 … 母体が飲んだ町は、胎児の甲状腺も破壊します。
  • 授乳中の人 … 母乳に町が出ますので、結果として乳児にも町を飲ませてしまうことになります。
  • 18歳以下の人 … 原則として、18歳以下の人にアイソトープ治療は行いません。
  • 活動性のバセドウ病眼症がある人 … 自己免疫が高まり、眼の症状が悪化する場合があります。

 

 

体外へ排出される放射性ヨウ素に気を配ります

甲状腺に取り込まれなかった放射性ヨウ素は、数日間かけて、汗、唾液、尿などから体の外へ排出されます。1週間ほどは、次のようなことをこころかけてください。

  • 水分を十分にとって、不要な放射性ヨウ素を早く出すようにします。
  • トイレで排泄後は、水を2度流すようにします。
  • 家族でも、深いスキンシップは避けましょう。特に妊婦や乳幼児、子どもは15分以上抱かないように。
  • 公共の場や乗り物では、ほかの人と1メートル以上の距離をあけます。

 

 

治療後、数カ月であらわれる機能低下症

アイソトープ治療には、副作用の心配はありません。ただし、これは副作用ではないのですが、治療によって甲状腺機能が変わりやすくなることがあります。

 

服用したヨウ素131は甲状腺の細胞の一部を破壊しますが、この破壊が強すぎると、甲状腺機能低下症になります。大体、治療後2〜3カ月するとあらわれることが多いのですが、これを完全に防ぐ方法は、いまのところありません。

 

機能の低下が一時的な場合は、数カ月で回復します。しかし、永続性の機能低下もあり、この場合は回復の可能性はほとんどありません。こうなると、甲状腺ホルモン剤を生涯飲みつづける必要があります。

 

しかし、このような機能低下症は、ホルモンを補充することで甲状腺機能を正常に維持でき、安定した体調で生活することができます。甲状腺ホルモン剤は副作用もなく、費用は安価です。

 

 

長い年月がたってからあらわれる機能低下症

一方、アイソトープ治療後、何年も(ときには10〜20年も)経過してあらわれる機能低下症があります。晩発性(遅く発生する)の甲状腺機能低下症は、長い年月をかけて症状がじわじわと出てきます。

 

むくみ、皮膚のカサカサ、食欲不振、寒がり、抜け毛等このような症状は、患者自身も気づかないまま、日常生活の中で見逃されてしまいます。

 

長い時間が経過していると、いまの症状と過去のアイソトープ治療との因果関係に気づかないこともあります。

 

そのため、治療を受けた年月日、治療期間、病院(医師)、服用した薬などを記した簡単なメモを、ぜひ残しておくようにしましょう。

 

できれば、甲状腺機能が改善していて問題がないときも、半年に1回程度は外来を受診し、定期的なチェックをつづけることが大切です

 

 

外来で治療できるが入院して行う場合もあります

放射性ヨウ素は、外来で投与できる量の制限がありましたが、1998年にこの規制が緩和されました。いまは、ほとんどの人が、外来で治療できるようになっています。
ただし、安全をはかるために、治療を行う設備には厳重な法的規制があります。経験豊富な専門医がいる病院でなければならず、これが可能な病院はまだ限られています。
なお、アイソトープ治療を外来で受けるためには、抗甲状腺薬で甲状腺機能を正常に近い状態にコントロールしておく必要があります。
機能亢進症がコントロールされていないまま、アイソトープ治療を受けると、治療後にバセドウ病が悪化して危険な状態になることがあるからです。

 

入院して治療する場合
高齢者や心臓病を合併している人

アイソトープ治療をきっかけに心全や不整脈を起こすことがあります。慎重を期して、入院がすすめられます。

抗甲状腺薬が使えない場合

副作用で抗甲状腺薬が使えない場合は、アイソトープ治療後の機能亢進症のコントロールがむずかしいため、入院して行うことがあります。

ヨウ素制限食のために

きちんとしたヨウ素制限食が準備できない家庭環境の人には、ヨウ素制限の病院食を食べてもらうため、入院して行うことがあります。

 

 

アイソトープ治療のQ&A

 

これから出産を考えています。アイソトープ治療は可能ですか?

アイソトープ治療を受けると、しばらくは甲状腺機能が変動するので、流産しやすくなります。また、甲状腺を刺激する物質で胎児の甲状腺に影響することもあるので、できれば妊娠は避けたほうがよいでしょう。

 

さらに、アイソトープによる治療で治ったあとも、長い問、甲状腺を刺激する物質が血液中に高い濃度で残っている場合があります。妊娠しても、この濃度が高いままですと、胎児の甲状腺に影響することがあります。

 

ですから、近々出産を希望している人には、アイソトープ治療ではなく、抗甲状腺薬あるいは手術療法をおすすめします。

 

このごろは若い人でもアイソトープ治療を受ける人がふえているようですが?

これまで日本では、アイソトープ治療は中高年の患者さんに行うのが一般的でしたが、最近では、副作用の少ないすぐれた治療法であることが認識され、若い人にも行われるようになっています。
ただし、18歳以下の人がアイソトープ治療を受けて甲状腺機能低下症になった場合、甲状腺ホルモン剤の服用が一生必要となってしまいますので、18歳以下の人にはアイソトープ治療はすすめられません。

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