スポンサーリンク

バセドウ病の治療は抗甲状腺薬を服用することが第一選択となります

抗甲状腺薬によってホルモン合成を抑えます

日本では、バセドウ病患者の90%以上は、まず抗甲状腺薬で治療をはじめます。

 

抗甲状腺薬は、甲状腺ホルモンがつくられるときの酵素(ペルオキシダーゼ)の働きを抑え、ホルモンの合成を少なくする薬です。つまり、過剰になっている甲状腺ホルモンをそれ以上つくらないようにして、血
液中のホルモン濃度を正常に戻す働きをするのです。

 

甲状腺ホルモンの量が正常になってくると、少なくなっていた甲状腺刺激ホルモン(TSH)がふえ、自己抗体(TRAb)の数値も正常の範囲に戻ってきます。

 

 

抗甲状腺薬には、チアマゾールとPTUの2種類があります

抗甲状腺薬は、現在、次の2種類が使われています。

  • チアマゾール(商品名:メルカソール、略名:チアマゾール)
  • プロピルチオウラシル(商品名:チウラジールあるいはプロパジール、略名PTU)

チラウジールとプロパジールは、製造・販売会社が異なるために名前が違うだけで、薬としては同じものです。
※以後、チアマゾールはチアマゾール、プロピルチオラウシルはPTUと表記します。

 

チアマゾールは1錠5mg、PTUは1錠50mgで、薬の分量はPTUのほうが10倍多いのですが、1錠の効き目はチアマゾールのほうが強い傾向があります。

 

また、チアマゾールのほうが効果があらわれるまでの時間が早く、副作用もやや少ないといった理由で、使われる頻度が高くなっています。

 

 

抗甲状腺薬が作用し効果が出るまでの時間

抗甲状腺薬は、きちんと量を守って服用していれば、まず効かないことはありません。ただし、効果があらわれるまでには時間がかかります。

 

動悸が少なくなって体が楽になってきた、と感じるようになるのは、早い人でも飲みはじめて2〜3週間かかります。甲状腺のはれが大きく、重症の場合は、2カ月以上かかることもあります。

 

過剰につくられた甲状腺ホルモンは、甲状腺細胞に貯蔵されているため、血液中の甲状腺ホルモンはすぐには減らないのです。しかし、薬によってホルモン合成が抑えられ、ストックが減ってくると、血液中の甲状腺ホルモンも減ってきます。

 

 

初期は十分な量を飲み々に減らしていきます

抗甲状腺薬の服用は、初期は、甲状腺機能を早く正常にするため十分量を飲み、その後徐々に減量していき、一定量の服用をつづけていくという方法が一般的です。

 

チアマゾールの場合は、1日3〜6錠(15〜30mg)からはじめます。この量は、フリーT4の数値の高さに応じて決まります。十分量の服用は、甲状腺ホルモンやTSHの検査値が正常になるまでつづけます。

 

ほとんどの人は、飲みはじめて1カ月ほどすると改善が見られます。動悸や息切れ、疲労などの症状が軽くなり、精神的にも落ち着いてきます。

 

その後、ゆっくり薬の量を減らしていきます。短い人では、1.年以内、長い人でも3年ほどで、維持量(1日おきに1錠)にまで減らせます。

 

そして、バセドウ病の原因物質である自己抗体(TRAb)の数値を参考にして(陰性になるのが望ましい)、寛解(ほぼ治っている状態)かどうかを見ながら、服薬の中止を判断します。

 

ただし、抗甲状腺薬の効果のあらわれ方は人によって差があり、服薬期間がどれくらい必要か、予測するのはむずかしいといえます。

 

維持量の服用は6カ月ほどです

維持量の服用を6カ月ほどつづけると、甲状腺ホルモンやTSHの数値が正常に保たれます。さらに、TRAbが低下しますので「寛解」に入ったと考えられますが、服薬を中止する時期の判断は非常にむずかしいといえます。

 

服薬中止のめど

薬をやめるかどうかの一つのめどは、維持量の6カ月、甲状腺ホルモンやTSHが正常値にあることです。また、TRAbの状態も重要です。TRAbが陽性の場合は、治療をやめると50〜90%の人が再発するといわれます。

 

一方、TRAbが陰性ですと、治療をやめてもI〜2年で再発する人は20〜30%程度です。

 

服薬期間は人によって差があります

1年ほどで薬をやめられる人もいますが、10年以上飲みつづける場合もあります。しかし、寛解しにくい人でも、自分の状態に合った量をきちんと服用していれば、日常生活は支障なく過ごせます。

 

治療開始から2年

抗甲状腺薬の治療をはじめて2年間で薬をやめられるのは、患者さんの約半数です。中止の見通しが立たない場合は、このまま薬をつづけるか、ほかの治療法に切りかえるか、主治医と相談してください。

 

薬をやめても血液検査をします

抗甲状腺薬は、服薬を中止するとかなりの率で再発します。再発した場合は、はじめから薬をふやして治療をやり直しますが、すぐ治療を再開したほうが回復も早くなります。

 

再発を早く見つけるためにも、定期的な血液検査でチェックが必要です。

 

 

抗甲状腺薬の飲み方

初期は十分な量を飲み、その後、徐々に減らしていきます。検査数値が正常値になっても、しばらくは一定量(維持量)を飲みつづける方法が一般的です。

 

MM Iの場合、フリーT4の高さによって1日3〜6錠(15〜30mg)からはじめます。維持量の時期になると、1日に1錠、さらに2日に1錠となります。服薬中は、定期的に血液検査をして甲状腺ホルモン濃度をチェックし、薬の量を調整します。

 

MM IとPTUの2種類の薬に大きな違いはありませんが、チアマゾールのほうが効果が確実で副作用が少ないため、はじめに使われることが多くなっています。妊娠を希望する人や授乳中の人は、PTUを使用します。

 

指示通りの量をきちんと服用せす、不規則な飲み方をすると、副作用が出やすくなります。タバコは、抗甲状腺薬の効き方に悪影響をあたえ、眼症を悪化させるため、すぐ禁煙するようにしてください。

 

 

抗甲状腺薬は効果の高い薬ですが、副作用もあります。

軽い発疹や軽度の肝機能障害が多いのですが、まれに生命にかかわるような重い副作用も起こります。副作用は、服用をはじめて5日後から3カ月以内に出ることが多いので、この期間は2〜3週間ごとに受診をして、副作用の有無をチェックする必要があります。

 

抗甲状腺薬は、発売されてから50年以上がたっていますので、副作用についての研究も進んでいます。医師の指示を守り、注意しながら服用すれば決してこわい薬ではありません。ただし、次のような症状が出たら、必ず医師に相談してください。

 

かゆみのある赤い発疹、じんま疹などの「皮膚症状」

抗甲状腺薬でもっとも多い副作用で、5〜10%の頻度で見られます。

症状

この副作用が出やすいのはチアマゾールで、服用開始後1〜3週間でかゆみのある赤い発疹やじんま疹のような皮膚症状があらわれます。

 

ただし、バセドウ病でもかゆみや湿疹が起こることがあるので、抗甲状腺薬によるものかどうか、わかりにくい場合があります。

 

対処

軽い場合は、薬の服用をつづけていると消えることもありますが、皮膚症状があらわれたことは医師へ伝えてください。抗ヒスタミン薬などを処方してもらいます。

 

 

突然の高熱、のどの痛みは「無顆粒球症」のおそれです

無顆粒球症とは、血液中の白血球のうち顆粒球(好中球)がいちじるしく減ったり、なくなったりする副作用で、500人に1人ほどの割合であらわれます。抗甲状腺薬が好中球と結合して起こる、一種のアレルギー反応とされています。

 

無顆粒球症になると細菌への抵抗力が弱まり、さまざまな感染症にかかりやすくなります。ときに生命にもかかわる重い副作用で、実際に死亡例も報告されています。

 

症状

突然の高熱、悪寒、のどの痛みなど、カゼに似た症状があらわれます。

 

対処

ほとんどの場合、薬の服用をはじめて3カ月以内に起こりますので、この期間は2〜3週間に1回、白血球数と白血球分画(白血球の内訳)の測定を受けてください。

 

ただし、測定を受けていても、突然起こることも多いので、症状があらわれたら、ただちに服薬を中止し、医師を受診してください。

 

バセドウ病の診察を受けているところとは別の医療機関を受診する場合は、必ず抗甲状腺薬を服用していることを伝えてください。

 

 

白目が黄色い、尿の色が濃いなどの「肝機能障害」

抗甲状腺薬で起こる肝機能障害には、一過性のものと重症のものがあります。また、治療前のバセドウ病(甲状腺ホルモン過剰)によって、肝機能障害が起こる場合もあります。

 

これらを区別するためには、治療前に必ず肝機能検査を受けておくことが大切です。そして、治療前よりも肝機能の数値(AST、ALT、ビルビリン)が上がっている場合は、薬の副作用を疑います。

 

チアマゾールでは軽いものが多いのですが、PTUは重症の肝機能障害を起こすことがあります。また、服用後3カ月を過ぎても起こる可能性があり、注意が必要です。

症状

皮膚や白目が黄色い、尿の色が濃い(黄褐色)、食欲不振、全身の倦怠感などの症状があらわれます。

 

対処

肝機能障害が、バセドウ病によるものか、薬の副作用によるものか判断します。さらに、薬の副作用の場合は、それが一過性のものなのか、抗甲状腺薬を中止しなければならないほど重症なものなのかを見きわめる必要があります。

 

薬を飲みながら、1〜2週間ごとに肝機能検査を行って経過観察し、数値が正常化していけば、一過性のものと判断して服薬をつづけます。正常化しない場合は、薬(特にPTU)の中止を検討します。
中止をする場合は、別の治療法(放射性ヨウ素あるいは手術)を選択します。

 

 

発熱、血尿、関節痛などは血管炎症候群のおそれ

血管炎症候群は、PTUの服用を数カ月から数年にわたってつづけていると、まれに見られる副作用で、服用初期にはありません。また、チアマゾールではほとんど起こりません。

 

血管の炎症によって、腎臓や肺など全身の臓器に障害が起こる重大な副作用です。

症状

発熱、関節痛、筋肉痛などではじまり、血尿や血痰が見られる場合もあります。

 

対処

早い人は3週目くらいから起こり、長い人は30年後に起こります。いつ発症するかわからないというむずかしさがあります。血管炎症候群が起こったら、ただちに抗甲状腺薬を中止し、ほかの治療法に切りかえる必要があります。

 

 

抗甲状腺薬のQ&A

 

薬を飲むと、苦みが口の中に残ることがあります。どうしてですか?

抗甲状腺薬のチアマゾールもPTUも、どちらも味覚異常の検査に用いられるほど苦みがある薬ですので、苦みがあっても心配いりません。

 

抗甲状腺薬と飲み合わせが悪い薬はありますか?

抗甲状腺薬は、ほかの薬といっしよに服用しても問題ありません。ただし、甲状腺機能が改善することで併用薬の吸収が異なってくるため、効果が増強したり減弱したりすることがあります。ほかの病気で医療機関を受診する際は、抗甲状腺薬を服用していることを伝えてください。

 

薬を飲みはじめましたが、あまり効果が感じられません。どうしてですか?

抗甲状腺薬は、新たな甲状腺ホルモン合成を阻害しますが、甲状腺ホルモンの分泌は抑制しません。そのため、すでに甲状腺内に貯蔵されていたホルモンが血中に出つづけるために、薬の効果があらわれるまでには、ある程度の時間(1〜2カ月)が必要です。ですから、自己判断で勝手に服用を中止しないことが大切です。

 

治療開始のときに、抗甲状腺薬といつしよにβ遮断薬(インデラル、テノーミンなど)が処方されました。このβ遮断薬とは何ですか?

β遮断薬は、高血圧症、狭心症、および不整脈の治療に用いられますが、そのほか脈を遅くさせる作用(徐脈)もあります。

 

抗甲状腺薬の効果があらわれるまでには時間がかかりますので、その間、甲状腺ホルモンの心血管系に対する直接の作用による頻脈(脈が速くなる)や不整脈の改善はされません。そこで、β遮断薬を不整脈や頻脈の治療の目的で併用します。

 

通常、抗甲状腺薬が効果をあらわすと頻脈や不整脈の症状が改善され、β遮断薬は中止となります。しかし、甲状腺ホルモンが正常化しても不整脈が改善されない場合は、不整脈の治療は継続されます。

 

血圧がふだんから低めなのですが、降圧薬のβ遮断薬が処方されました。どのような注意をしたらよいでしょうか?

服用後に立ちくらみなどの血圧が下がる症状が出たり、脈が1分間に50以下になったりしたら、ただちにβ遮断薬を中止して主治医に連絡してください。

 

β遮断薬を服用してはいけない人はいますか?

原則として喘息の方は服用できません。

スポンサーリンク

関連ページ

甲状腺の病気を理解しましょう
甲状腺とはどんな臓器か知っていますか?
甲状腺ホルモンは過剰と不足では全く正反対の症状が出ます
甲状腺の病気には3つのタイプがあります
甲状腺の病気の原因とは何でしょうか
甲状腺の病気を早く見つけるポイントはどこですか
甲状腺の病気の治療にはまず信頼できる医師を見つけることです
甲状腺の病気を見つける検査にはどのようなものがあるのでしょうどのようなものがあるのでしょうか
バセドウ病とは
バセドウ病では首の腫れや目の症状が特徴的です
バセドウ病は機能亢進により全身に症状がでます
バセドウ病の診察と検査ではどんなことを調べますか
バセドウ病は3つの治療法から自分にあったものを選びます
橋本病の診察と検査ではこのようなことを調べます
バセドウ病のアイソトープ治療は効果は確実で副作用もない安全な方法です
バセドウ病の手術による治療には全摘と亜全摘があります
バセドウ病眼症の治療はこのように行われます
バセドウ病でもきちんと治療を受けていれば妊娠と出産は十分に可能です
橋本病とは
橋本病は機能低下が現れないと症状があらわれません
橋本病は機能低下が無ければ治療の必要はありません
橋本病の治療は不足しているホルモンを薬で補います
橋本病の患者さんの妊娠と出産について
橋本病以外の機能低下症の治療はどのようにするのですか
甲状腺腫瘍の腫瘍には良性と悪性の2種類があります
甲状腺腫瘍が良性の場合は治療しないで経過をみることもあります
甲状腺がん(悪性腫瘍)には6つのタイプがあります
バセドウ病や橋本病以外の甲状腺の病期はどのようなものがあるのでしょうか
子供は甲状腺の病気になることは少ないですが影響は大人よりも深刻です
甲状腺の病気の日常生活の注意点
甲状腺の病気と日々の食事の工夫