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脳卒中の急性期は廃用症候群を防ぐことが重要です

急性期は、症状が安定しないので、どうしてもベッド上で横になっている時間が長くなります。そのため、筋力が低下し、関節がかたくなり、床ずれもできやすくなります。こうした廃用症候群を防ぐためには、横
になった姿勢を良好にととのえることが重要です。

 

具体的には、手足を正しい位置に保つ「良肢位保持(ポジショニング)」、床ずれを防ぐための定期的な「体位変換」、手足の関節を動かす「関節可動域運動」などを行います。

 

 

脳卒中の治療のために入院すると、その後の治療スケジュールを記した用紙を渡されるケースが多くなっています。これは「クリニカルパス(入院治療計画書)」と呼ばれるものです。クリニカルパスの目的は、医師、看護師、リハビリスタッフなど多どの職種の共同作業を背景に、患者さんに合った、質の高い医療を提供そることにあります。

 

 

廃用症候群を防ぐためにできるだけ早期にリハビリを開始します

安静時の良好な姿勢で、筋肉と関節の状態をよりよく保ちながら、少しずつベッド上での機能回復リハビリを開始します。ベッド上でのリハビリは、治療に影響をおよぼさないと判断されれば、まだ血圧や脈拍が
不安定であっても、早ければ入院初日からはじめます。

 

拘縮を防いで関節の動きをスムーズにする訓練を「関節可動域運動(ROM運動)」といいます。関節可動域とは、関節の動かせる範囲のことで、関節の動かせる範囲を保ちながら拘縮を防ぎます。関節可動域運動は、手足にマヒがある場合に行われます。

 

この運動には、自分で動かす「自動運動」と、介助してもらいながら自分で動かす「自動介助運動」、そして意識がない場合などにほかの人に動かしてもらう「他動運動」があります。

 

関節可動域運動を行うにあたっては、次のような点に注意します。

  • マヒのある側(患側)、ない側(健側)を問わず、日常生活での動作に必要な関節を動かします。
  •  

  • 1回の運動は3〜4秒かけてゆっくりと、無理のない範囲で、のびやかに動かすようにします。
  •  

  • 1日に数回、毎日行います。
  •  

  • 症状と回復の程度に応じて、同じ動きについて、自動、自動介助、他動を使い分けて行います。

逆動を行う前に関節をあたためておくと、動かしやすく、痛みもやわらぎます。

 

ベッド上で座る練習

患者さんの状態を見て問題がなければ、ベッド上で座る練習をはじめます。病院では、ギャッジベッドという起き上がり機能のあるベッド(介護ベッド)が使われていることが多いので、傾斜を徐々に上げていきながら、楽な姿勢になれる角度でベッドを固定します。このとき、ひざを軽く曲げると体がすべりにくく、安定します。また、マヒのある人はマヒのある側に倒れやすいので、マヒ側にクッションなどを置くようにします。

 

 

最初はベッドの背もたれで上体を支えながら座位を保つ練習をします。これを「座位耐性練習」といいます。座れるようになると、腹部の臓器が下がり、横隔膜が自由に動くようになって、呼吸が楽になります。大きく深呼吸をすることができるようになり、気管支にたまった痰なども排出しやすくなります。

 

また、上半身を起こすと、心臓より高いところにある脳に血液を送らなければなりませんので、結果的に心機能維持・向上につながります。

 

さらに、座ったまま食事ができるようになると、誤嚥をしにくくなります(誤嚥が防げれば誤嚥性肺炎も防げます)。また、介助者の手を借りれば、ポータブルトイレでの排尿・排便も可能となります。座って排泄
すると、寝たままの状態とちかって腹圧をかけやすく、排便がスムーズにできます。

 

 

ベッドから起き上がる練習

手足の動きがよくなり、ベッド上で安定した座位がとれるようになったら、次はベッドから起き上がり、ベッドの端に腰掛ける練習をします。マヒの程度にもよりますが、最初は介助者のサポートを受けながら起き上がり、ベッドの端に座る練習をします。

 

血圧や脈拍の変化、また、めまいや吐き気、極度の疲労などがなければ、少しずつ自力で起き上がれるように練習していきます。

 

一人で起き上がるためには、あおむけの状態から横向きの状態へと寝返りを打つ必要があります。この練習は、床ずれを防ぐ意味でも非常に重要なものです。

 

また、一人で起き上がるには、マヒのない側の手足を十分に活用することがポイントですが、慣れないうちは、マヒのないほうの手足がうまく使えず、姿勢も不安定になりがちです。

 

そのため、はじめのうちは、理学療法士や看護師などにそばにいてもらって練習したほうが安心です。

 

ベッド脇に立つ練習

安定した姿勢でベッドの端に座れるようになったら、次はいよいよ立ち上がる練習をします。立つことは、歩くための重要な前段階です。ベッド上でのリハビリからこの段階に至るまでの進行は、安静度のちがいやマヒの程度などにより個人差があります。早ければ、入院当日から行われます。

 

最初は、まずベッドの脇に立つ練習をします。安定した状態で立っためには、マヒのない側の足にしっかり力を入れる必要がありますので、前もって健康なほうの足首の動きなどをよくしておきます。

 

拘縮や筋肉の緊張によって、つま先が反った状態で固まっているような場合は、安定して立つために、包帯やサポーターで足首が直角になるように補正を行ったり、補正する装具を使ったりすることもあります。

 

立ち上がると、立ちくらみやめまい、また血圧の変動などが起こる場合もありますので、介助者は十分な配慮をする必要があります。

 

自力でベッド脇に立つときに便利なのがベッド榾や移動用のバーです。これらをベッドの脇にしっかり取りっけ、マヒのない側の手でつかまりながら立ち上がる練習をします。最初は、介助者に腰を持ち上げてもら
うと、立ち上がるときの力の入れ方がしだいにわかってきます。

 

嚥下訓練

脳卒中の急性期には、食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる嚥下障害を起こす人が多く見られます。嚥下に障害があると、飲食物が気道に入り、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。また、辱や舌、物を飲み込む筋肉などは、長期間使わないでいると動きが悪くなってしまうので、急性期でもベッドの背を上げられるようになれば、できるだけ早期から嚥下訓練をはじめます。

 

嚥下訓練は、次のような段階を踏んで行われます。

 

訓練の準備(説明と口腔ケア)

まず、患者さんと家族に、障害の状態や訓練の意味を説明し、理解してもらいます。訓練前には、歯みがきやうがい、粘膜の清拭などを行って口腔内をきれいにします。口の中には約300種、数千億個もの細菌が常在しているといわれており、これらの細菌が誤嚥によって肺の中へ入ることが誤嚥性肺炎の主な原因なので、できるだけ口の中を清潔に保つことが重要です。

 

基本訓練(間接的訓練)

嚥下に必要な動きをスムーズにするための基本的な訓練には次のようなものがあります。

 

唇、舌、ほおの運動

嚥下で使う筋肉の動きをよくする運動です。具体的には、口をあけたり閉じたりする、口に空気をためてほおをふくらませる、口をとがらせる、口を「イー」と横に開く、舌を出し入れする、舌を出して左右の口角をなめる、といった運動をくり返し練習します。

 

こういった動きの練習で、食べ物をかんで飲み込むという一連の動作をスムーズに行う基礎をつくります。

 

呼吸の訓練

嚥下障害があると、呼吸が浅くなり、十分に空気を吐き出しにくくなります。また、ふつうは、物を飲み込むときには無意識に呼吸を止めていますが、嚥下が困難になると飲み込んでいる最中に呼吸をしてしまい
飲食物が気道に入って誤嚥性肺炎を起こす危険性があります。

 

呼吸訓練の目的は、正常な呼吸を取り戻すことによって誤嚥を防ぐことにあります。具体的には、腹式呼吸、囗すぼめ呼吸、深呼吸などをくり返し行います。また、大きな深呼吸をくり返して息を止め、一気に吐き出したり、ゆっくり吐き出して息を止める、など、いろいろな呼吸法を組み合わせて行うこともあります。

 

空せき、空嚥下の練習

飲食物がのどの奥に残ってしまったり、あやまって気道に入ったときに、せきをして吐き出せるように、空せきの練習をします。また、咽頭の動きをよくするために、唾液をためて飲み込む「空嚥下」の練習をします。

 

言語訓練

話すことは、飲み込みの機能回復にも役立ちます。母音をできるだけ長く発声したり、一息で5回連続して発声するなどの練習をします。

 

摂食訓練(直接的訓練)

嚥下のための基本的な練習によって、そろそろ食事がとれると判断されれば、実際に食べ物を飲み込む練習を開始します。万一、あやまって誤嚥が起きた場合にそなえ、医師や看護師を中心に行われます。

 

嚥下しやすい体位をとる

基本的には、50〜60度にベッドを起こし、背もたれに寄りかかります。頭の下に枕かクッションをあて、ややうつむきかげんになるように姿勢をととのえます。首とあごの間に握りこぶしが入る程度の隙間があり、視線が前を向く程度にあごを引いた姿勢が基本です。視線があまり下を向いたり上を向いたりした状態では、誤嚥を起こしやすくなります。

 

リラックスする

食事をはじめる前には、首を左右、斜め、上方などに動かしたり、両肩をゆっくり上下させるなどして、肩や首のまわりをリラックスさせます。鼻から息を吸って息を止め、「ごっくん」と飲み込んでから息を吐くという動作も、嚥下をスムーズにするウオーミングアップとして効果的です。

 

最初はやわらかいものから

一般的に、飲み込みやすい食べ物というのは、適度な粘りがあり、ある程皮まとまりがあって、かみやすいものです。そのため、最初はとろみをつけた水やお茶、やわらかいゼリー状(ペースト状)のものを少量からはじめ、徐々に量を増やしたり、かたさを変えたりしていきます。

 

必要があれば造影検査で問題点を探る

嚥下訓練では、必要があれば、嚥下障害の程度や部位を調べるために、嚥下造影検査という検査が行われることがあります。

 

これは、X線透視装置を使って、造影剤を飲み込む過程を撮影するもので、この検査で、口腔→舌→咽頭→食道のうち、どの部位に問題があるかがわかります。こうした嚥下訓練は、たとえ急性期には改善できなくても、訓練をつづけることで、回復期、維持期には大半の人は食事ができるようになります。

 

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