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脳卒中の後遺症は障害を受けた部位や程度で異なります

脳は、大きく前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉に分かれますが、次のように部位ごとに機能が異なっています。

  • 前頭葉 … 思考、判断、計算、記憶などの知的機能、感情、人格など。
  •  

  • 頭頂葉 … 痛みや熱さなどの感覚(体性感覚)、行為、認知、判断など。
  •  

  • 側頭葉 … 言語、記憶、聴覚、嗅覚、情緒、感情など。
  •  

  • 後頭葉 … 視覚中枢。

そのため、ダメージを受けた部位や程度(大きさ)によって、あらわれる症状が異なってきます。同じ脳梗塞や脳出血でも、ある人は左の手足にマヒが生じ、ある人は言葉がうまく使えなくなり、ある人は熱や痛みに対して感覚がにぶくなる、といったように後遺症がそれぞれ異なるのは、障害を受けた部位が異なるからです。

 

後遺症でもっとも多く見られるのが運動障害です。障害を受けた側とは反対側にマヒやしびれが出ます(片マヒ)。これは大脳から伸びている運動神経が、首のあたりで左右に交差しているからです。また、脳がダメージを受けると、程度の差こそありますが、ADL(日常生活動作)の低下を招き、食事、排泄、歩行、着替えなどの動作が行いづらくなり、重症の場合は介護なしに日常生活を営むことが困難になります。
ADLの低下を防ぐには、早朝からの起立・歩行練習などのリハビリテーションが不可欠です。

 

脳卒中の後遺症には大きく分けて次の3種類があります。
1.神経症状
2.高次脳機能障害
3.精神症状

 

脳卒中の後遺症:神経症状

脳卒中の急性期の重症度が高いほど複数の後遺症が出やすくなります

脳卒中になると、中枢神経が損傷されることで、さまざまな神経症状(身体機能の障害)があらわれます。よく起こる神経症状には、「運動障害」「感覚障害」「言語障害」「床下障害」「排尿障害」「視野障害」などがあります。

 

後遺症は、1つだけあらわれることは少なく、多くの場合、いくつかの障害が重なってあらわれます。また、一般的に、急性期の重症度が高いほど、複数の後遺症があらわれやすく、それぞれの後遺症も重くなりがちです。

 

運動障害(片マヒ)

脳卒中の後遺症でもっとも多く見られるのが運動障害です。そして、あらわれる症状のほとんどが「片マヒ」です。片マヒは、左脳か右脳か、障害された部分の反対側の手足にあらわれるマヒで、「半身マヒ」とも
いいます。片マヒのほか、片側の腕、あるいは足だけにマヒがあらわれる「単マヒ」もあります。前大脳動脈閉塞では、下肢の単マヒを起こしやすくなります。

 

マヒの程度は、障害された部位や大きさ(広がり)によって異なります。こまかい動きができないといった程度のものから、まったく、あるいはほとんど動かない重度のものまでさまざまです。

 

また、自分の意思とは無関係に、手足などの体の一部、もしくは全体が動いてしまい、止めようと思っても止められないといった後遺症(不随意運動)が残ることもあります。よく見られるのが、健康な側に力を
入れると、マヒ側の手足が勝手に動いてしまうという現象です。

 

 

また、「痙縮」といって、手足の筋肉が突っ張って、手の指が握り込まれて開きにくいといった症状が出るケースもあります。

 

小脳が損傷された場合は、ふらふらする、バランスが取れずにうまく歩けない、めまいがする、といった症状(運動失調)があらわれることがあります。

 

マヒは、症状の程度にもよりますが、リハビリテーションによってある程度改善できます。ただし、回復過程は、年齢、障害の部位と大きさ意識障害の有無などにより、個人差があります。

 

マヒの回復は、一般的には発症から2〜3カ月あたりがピークとされており、その後はゆるやかな回復過程をたどり、発症から6カ月〜1年でほぼ横ばいの状態(プラトー)になるといわれます。6カ月を過ぎても手足にマヒが残っている場合は、その状態から完治することはむずかしくなります。

 

 

逆に、発症早期からマヒが軽く、ある程度動かせる人の場合は、日常生活で支障なく使用できるレベルまでマヒは回復するといわれます。

 

なお、ときに発症後、症状が段階状に進行することがあり、これを進行性脳卒中といいます。特に多いのは、進行性にマヒが増悪する例です。

 

 

感覚障害

感覚の神経は、運動をつかさどる神経とほぽ同じ経路で走っています。そのため、マヒなどの運動障害が起こると、同時に感覚障害も起きがちです。感覚障害が起こると、手足にしびれを感じたり、触覚、痛覚、温度感覚などがにぶったりします。

 

逆に、ちょっとした痛みや刺激を非常に強く感じてしまう「痛感過敏」という症状があらわれることもあります。

 

また、出血や梗塞の部位によっては、マヒをともなわずに、しびれだけが後遺症として残る場合もあります。特に、視床出血では、「視床痛」という半身の強いしびれが残ることがあります。

 

感覚障害も、運動障害と同じく、なかなか治りにくい後遺症です。

 

 

言語障害

言語障害には、唇や舌、のどなど発声や発語に関係する部分の筋肉がマヒしてうまく話せなくなる「構音障害」と、脳の言語中枢が損傷されることで起こる「失語」があります。失語は高次脳機能障害の一つです。

 

 

嚥下障害

嚥下障害は、食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる障害で、脳卒中の後遺症としてよく見られます。嚥下障害は、急性期の患者さんの6〜7割に起こるとされます。

 

嚥下障害があると、十分な栄養がとれなかったり、「誤嚥性肺炎」を起こしやすくなります。

 

嚥下障害は、短期間で自然におさまることもありますが、後遺症として長く残る場合もあります。特に、脳卒中を再発すると、その頻度が高くなります。

 

 

排尿障害

脳卒中で膀胱の筋肉にマヒが起こると、尿意を感じなくなったり、失禁、頻尿、尿が出ないなどの排尿障害が起こることがあります。

 

 

視野障害

脳内の視覚をつかさどる部分が障害されると、視野障害が起きます。視野障害でもっともよく見られるのが、「半盲」という症状です。これは視野の片側半分が見えにくくなる症状で、両目に起こるケースがよく
見られます(同名半盲)。

 

また、視野障害には、見える部分が欠ける「視野欠損」や、物が二重に見える「複視」などもあります。

 

視野障害は、ふつう、発症直後からしばらくの間は若干症状が強くなり、その後やや改善し、半盲が後遺症として残ることが多いようです。

 

視野障害があると、歩行中に物にぶつかってケガをしたり、字を書いたり読んだりすることが不自由になったりするなど、日常生活に支障をきたします。

 

脳卒中の後遺症:高次脳機能障害

外からは見えにくいやっかいな後遺症です

高次脳機能障害とは、知的活動や精神活動など、運動や感覚といった基本的機能よりもより高いレベル(高次)の脳機能が障害されることです。手足のマヒなどと異なり、外からは見えない障害のため、本人にも、また周囲の人にも障害がわかりにくいのが特徴です。

 

高次脳機能障害には、言葉の障害、行為の障害、認知の障害、記憶の障害などがあります。また、高次脳機能障害では、注意力、計画力、判断力にかかわる障害も生じます。

 

言葉の障害:失語

適切な単語を選んで話す、大や物の名前を正しく書く、文章を読むといった言葉の理解や表現ができなくなります。

 

一般に、右利きの人のほとんどは左脳に言語中枢があります。左利きの人でも3分の2は左脳に言語中枢があるため、失語が起こりやすいのは脳の左側に出血や梗塞が生じた場合です。また、言語中枢のどこが障害されたかによって、症状のあらわれ方が異なります。

 

ブローカ失語(運動性失語)

ブローカとは、左脳前頭葉にある「ブローカ野」と呼ばれる領域のことで、ここは主に言語処理、特に「自分から発話する場合の言語処理」を行っています。このブローカ野が障害されると、「相手の言葉は理解できるが、発語するのがむずかしい」という状態になります。

 

そのため、言葉を発するときは、抑揚に乏しく、たどたどしい話し方になります。 また、障害されるのは音声発話だけでなく、書くことでも困難が生じ、文章などが書けなくなります。

 

ウェルニッケ失語(感覚性失語)

ウェルニッケ失語は、ブローカ失語に次いでよく見られる失語です。ウェルニッケとは、脳の左右の側頭葉にある「ウェルニッケ野」のことで、ここが障害されると、「言葉が聞こえてはいるか、理解できなくなる」といった症状があらわれます。

 

また、よどみなく話しますが、本人が言語を理解できていないために、意味のない言葉や言いまちがいが多く、話の内容が意味不明になります。言葉の発音は明瞭で、リズムや抑揚も保たれているため、認知症や精神障害者とみなされてしまうケースもあります。

 

健忘失語

理解力は良好ですが、適切な言葉や物の名前が思い出せず、回りくどい話し方になります。物の名前が思い出せないために、「あれ」「これ」といった表現が多くなります。また、言葉を思い出そうとして、しばしば話が中断します。

 

伝導失語(復唱障害)

理解力は良好ですが、錯語、特に字性錯誤が多く、「めがね」を「ねがね」などと言いまちがえたりします(音韻の置換)。まちがいを訂正しようと言い直しをくり返すため、話が中断しがちです。

 

全失語

中大脳動脈全域が障害されると、言葉を理解する能力、表現する能力が、ともに失われます。

 

 

行為の障害:失行

失行は、片マヒやしびれなどの運動機能の障害がないにもかかわらず、自分のやりたい動作や運動、行為などが思っているようにできない状態です。失行にはいくつかの種類がありますが、日常生活に支障をきたすのは次のようなタイプです。

 

運動失行

それまでは簡単にできていたボタンかけや財布の開閉などがうまくできなくなります。また、歯ブラシに歯みがき粉をつけ、みがいてから口をすすぐ、あるいは急須に茶葉を入れて茶碗に注いで飲む、といった日常動作の手順がわからなくなります。

 

着衣失行

衣服を着るときに、表裏や前後がわからなくなったり、着方がわからなくなったりします。

 

認知の障害:失認

失認は、視覚や聴覚、触覚などの感覚障害がないにもかかわらず、よく知っているはずの対象物が何であるか認識できない状態です。

 

失認には、視空間失認、視覚失認、身体失認、聴覚失認などがありますが、日常生活に支障をきたすのは次のようなタイプです。

 

半側空間無視

空間の右側、もしくは左側のどちらかが認識できなくなります。通常は、右大脳半球の障害によって起こる左半側空間無視が多いようです。そのため、たとえば食事中に、体の左側にある料理を認識できずに残してしまったり、絵を描いているとき、左側半分をまったく描かなかったりします。

 

また、歩行中にしだいに右に寄って壁にぶつかったり、左足の靴をはき忘れたり、左側にある障害物に気づかずにぶつかったりします。

 

地誌的失認

地誌的失認とは、地理や場所にかかわる障害で、よく知っているはずの道で迷ったり、トイレの場所や自分の部屋がどこだかわからなくなったりします。

 

物体失認

よく知っているはずの物を見てもそれが何だかわからなくなります。

 

聴覚失認

犬の鳴き声、電話の音など、よく知っているはずの音が何であるかわからなくなります。

 

記憶障害

記憶障害が起こると、日時、場所人の名前などが覚えられない、新しいことが覚えられない、過去に経験したことが思い出せないなど、記憶と学習が困難になります。

 

注意障害

集中力が欠けて注意が散漫になり、一つのことに集中できなくなったり、ぼんやりとした状態となって、すべての面で反応が遅くなったりします。また、2つのことを同時にしようとすると混乱します。

 

遂行機能障害

遂行機能とは、論理的に考え、計画し、そして実行する能力のことですが、そうしたことができなくなります。人に指示してもらわないと何もできなくなったり、行きあたりばったりの行動をしたりします。また、目的を持って買い物をする、あるいは料理をつくるといった行為がむずかしくなります。

 

判断力の低下

現状把握ができなくなったり、相手の都合や迷惑を考えられなくなったりします。

 

脳卒中の後遺症:精神症状

マヒなどとちかって精神症状は気づきにくいのが特徴です

脳卒中を起こしたあとは、精神的にもさまざまな症状(精神症状)があらわれることがあります。

 

うつ状態

うつ状態は、脳卒中の後遺症としてしばしば見られるものです。脳の損傷の影響によるもののほか、病気のショックが原因で起こるケース私あります。うつ状態は脳卒中の発症後しばらくたってから起こることが多く、「脳卒中後うつ」と呼ばれます。

 

脳卒中後うつの症状の特徴は、抑うつ気分よりは意欲の低下や活動性の減退(ほとんど活動したがらない)が目立つ点です。また、うつ病に特有の1日のうちでの気分の変動(日内変動。朝がもっとも具合が悪く、夕方になるにつれて回復してくる)はほとんど見られません。

 

不安

ある日突然、動けない、歩けない、話せない、という状況におちいったとき、どんな人でもすぐにそのような状況に適応はできません。「これは夢であってほしい」と思うこともあるかもしれません。あるいは、起こっている現実を否定しようとするかもしれません。

 

しかしやがて、自分のきびしい現実と向き合わなくてはならなくなります。「これから、いったいどうなるのだろう。病気は治るのだろうか。仕事に復帰できるのだろうか。家族は……」と、次から次へと将来への不安がわき起こってきます。その不安から、夜眠れなくなったり、気持ちが不安定になったりします。

 

感情障害

感情障害とは、気分や感情の変化を基本とする障害で、感情が不安定になる状態です。感情が高ぶったり(イライラする、怒りっぽくなる)、逆に急に気分が沈んだりします。 ほんのちょっとしたことで泣いた
り笑ったり、ひどくおびえたりすることもあります。これを「感情失禁」といいます。

 

おだやかだった人が急に攻撃的になるなど、人によっては性格が変わったようになるケースもあり、家族など周囲の人はとまどうことも少なくありません。

 

意欲の低下

自発性や積極性がなくなり、何もする気になれなくなります。家族やスタッフに依存的になり、周囲からの働きかけがないと、自分からは動こうとしません。自分でできることも、人に頼むことが多くなり、自分でするようにといわれると、イライラしたり、怒ったりします。

 

病識不十分

脳卒中の患者さんは、脳内の障害を自分の目で確かめることができません。マヒなどの身体障害は、自分の目で見て、障害の重さを感じとることができますが、認知機能や知的機能など、目に見えない障害は自覚できないことが少なくなく、自分が障害を持っていることが十分に認識できません。

 

明らかにマヒで手が動かないのに、「別に動かないわけではない」と言ってみたり、足のマヒのために歩けないのに「ふつうに歩ける」と言ったりします。病識を十分に持てない患者さんの場合、危険行動からの転倒・転落が問題となります。

 

せん妄・幻覚

せん妄は、一時的に起こる軽度の意識障害で、記憶や思考が混乱するため、意味不明なことを言ったり、激しく動き回ったりします。実際にはないものが見えたり聞こえたりする「幻覚」をともなうこともあります。

 

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