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くも膜下出血の急性期には脳動脈瘤の再破裂を防ぐために手術が行われます

くも膜下出血の急性期の治療では脳動脈瘤の再破裂と血管攣縮の予防が重要です

くも膜下出血の初期治療の目的は、脳動脈瘤の再破裂を防ぐことと、頭蓋内圧の管理、そして全身状態の改善にあります。患者さんが重症の場合は、まず心肺蘇生など必要な救命処置と呼吸・循環の管理を行います。

 

くも膜下出血では、一度破裂した脳動脈瘤が再破裂する危険性があり、再破裂すると死亡率がさらに高くなります。そのため、くも膜下出血の急性期では、脳動脈瘤の再破裂を防ぐ治療がきわめて重要です。

 

また、くも膜下出血を起こしたあと、3日目ぐらいから2〜3週間の間に起こる現象に「血管攣縮(けっかんれんしゅく)」があります。これは、脳の血管が縮んで血液の流れが悪くなる状態で、そのため、脳の血流が減り、脳梗塞を引き起こす原因となります。くも膜下出血を起こした患者さんの約30%が血管攣縮を起こし、そのうちの約半数が脳梗塞を起こすとされます。

 

 

なぜ血管攣縮を起こすのかについては、まだ十分に解明されていませんが、出血量が多いと血管攣縮が起きやすいといわれます。

 

脳動脈瘤の再破裂と血管攣縮は、くも膜下出血の予後を左右する重要な因子です。

 

脳動脈瘤の再破裂を防ぐために行われる治療は、「開頭手術」や「血管内治療」などの外科的治療が中心となります。心臓病などの重大な合併症がある患者さんや、昏睡状態にあるなど重症の患者さん以外は、可能な限り手術を行います。

 

手術の前に行われる初期治療

手術の前には、再破裂による出血や脳ヘルニアを防ぐために、次のような治療が行われます。

 

血圧管理

降圧薬(カルシウム拮抗薬など)の使用。

 

頭蓋内圧管理

抗脳浮腫薬(濃グリセリン、マンニトールなど)の使用。

 

鎮痛・鎮静

呼吸管理を行うとともに、激しい頭痛を抑えるための鎮痛薬や、けいれんがある場合には抗けいれん薬を使用。

 

 

手術を行う時期

患者さんの状態を見て、手術が行えると判断した場合には、原則として出血後72時間以内に行います。72時間以内に手術を行った場合は、それ以降の手術よりも予後がよいことがわかっています。

 

患者さんが運ばれてきた時点ですでに72時間を過ぎている場合は、手術によって血管攣縮が起きる危険性があるので、血圧管理などをしながら、血管攣縮が起きやすい時期が過ぎるのを待ってから手術を行うこともあります。

 

また、患者さんに重い糖尿病や心臓病(不整脈)などの合併症があって全身状態が悪い場合、あるいは難易度の高い手術が予想されるため急性期に行うと危険性が高いと判断された場合にも、待機して様子を見ることがあります。

 

 

くも膜下出血の手術

くも膜下出血の手術は、脳動脈瘤の再破裂を防ぐためにも、できるだけ早期(72時間以内)に行う必要があります。

 

ただし、患者さんの状態によっては手術ができない場合もあります。手術ができるかどうかは、患者さんの「重症度」が問題となります。

 

現在、くも膜下出血の重症度分類には、「Hunt and Hess分類」や「Hunt and Kosnik分類」などがあり、いずれも国際的に使われています。

 

「Hunt and Hess分類」では、重症度がTからXまで5段階に分類されており、早期の手術が可能なのはグレードT〜Vの場合です。Wの場合は、一般的には年齢や全身状態を考慮し、待機手術(3週間目以降)、または早い段階で、開頭手術より体への負担の少ない血管内治療(コイル塞栓術。後述)を検討します。Xの場合は基本的に手術はできず、保存的治療(薬物などによる内科的な治療)の対象となります。

 

 

現在、主に行われている2つの治療法

現在、主流となっているくも膜下出血の外科的治療は、「クリッピング術」(開頭手術)と「コイル塞栓術」(血管内治療)の2つです。

 

クリッピング術

クリッピング術は、頭を開いて動脈瘤の付け根をチタンなどの金属製のクリップではさみ、血液が動脈瘤の中に流れ込まないようにする手術です。

 

手術に要する時間は3〜4時間程度です。開頭して肉眼で確認しながら手術を行いますので、確実に再破裂を防ぐことができますが、開頭しなければならないので、患者さんへの負担が大きくなります。

 

現在、クリッピング術は、比較的重症でないくも膜下出血を起こした脳動脈瘤や未破裂動脈瘤の治療にもっとも多く使われている手術方法です。この方法は長い実績があり、その効果も実証されています。

 

コイル塞栓術

コイル塞栓術は、開頭せずに行われる血管内治療の一つで、最近急速に進歩してきた治療法です。足の付け根の血管からカテーテルを挿入し、画像を見ながら脳動脈瘤のところまで送り込んだのちに、動脈瘤の中にプラチナ製の細いコイルを詰めて留置する方法です。治療にかかる時間は2〜3時間です。

 

このコイル塞栓術の長所は、開頭手術よりも体への負担が軽いことと、クリッピング術がむずかしい部位(脳底動脈瘤など)でも可能なことです。また、複数の動脈瘤がある場合には、同時に治療できることもあ
ります。さらに、血管攣縮を引き起こすおそれがあまりないので、発症後72時間以上たってからでも行うことができます。

 

ただし、動脈瘤の大きさや形によっては、この方法ができない場合があります。また、コイルを詰める際に出血したり、コイルを入れたあとも、内部が血栓化し、安定するまでに時問がかかる可能性があります。

 

カテーテルを使ったコイル塞栓術は、高い技術が要求される上に、歴史が浅い治療法なので、長期予後について、まだ確実なことがわかっていません。

 

クリッピング術とコイル塞栓術のどちらを選択するかは、脳動脈瘤の大きさ、場所(部位)、合併症の有無年齢などを考慮して慎重に決められます。

 

 

そのほかの外科的治療

クリッピング術やコイル塞栓術では対処しにくい場合には、次のような手術方法があります。

 

トラッピング術

トラッピング術(親血管閉塞術)は、脳動脈瘤がある血管の分岐点のうち、親血管(太い血管)か分岐動脈のどちらか一方をコイルやクリップでふさぐ方法で、非常に大きな脳動脈瘤や、クリッピング手術を行う
ことがむずかしい場合などに行われます。

 

ただ、親血管にクリップをかけると、その先に血液が流れなくなるので、頭皮の血管や前腕の血管などを利用して「バイパス(側幅血行路)」をつくり、血流を保ちます。バイパスによって十分な血液が流れている
のを確認したのちに、動脈瘤の前後の血管にクリップをかけて、動脈瘤内への血流を遮断します。手術時間は5〜6時間です。

 

コーティング術

脳動脈瘤が小さな場合、あるいは半球状などでクリップで止められないような場合には、脳動脈瘤や親血管を特殊な包帯で巻き、医療用の接着剤で固めて補強するコーティング術(動脈瘤被包術)という方法が行われることがあります。

 

コーティング術は、ほかの手術方法にくらべると、再破裂の予防効果は劣りますが、放置することにくらべれば有用と考えられます。

 

 

くも膜下出血の手術後の治療

くも膜下出血は、外科的治療などで脳動脈瘤の再破裂を予防しても、それで治療が終わるわけではなく、血管攣縮や、水頭症、全身の合併症などの治療が必要となります。

 

血管攣縮は、くも膜下出血発症後、何らかの原因で脳の血管が縮んで血液の流れが悪くなる状態です。脳が虚血状態となるため、脳梗塞などが起こりやすくなります。発症後3〜4日してから発生し、約2週間持続します。血管攣縮の治療法としては、次のようなものがあります。

 

  • 手術の際、くも謨下腔に「脳槽ドレナージ」を留置して、たまった血腫や髄液を除去する。
  •  

  • カテーテルを使い血管内を広げる。
  •  

  • 薬物療法としてファスジルやオザグレルナトリウムなどの血管拡張剤を投与する。
  •  

  • 循環血液量増加、人為的高血圧、血液希釈の3つの療法(頭文字から「トリプルH療法」と呼ばれる)を行う。

 

水頭症は、何らかの原因で髄液が脳室内に過剰にたまり脳室が拡大する病気です。水頭症には、くも膜下出血発症後まもなく起こる急性水頭症と、発症後1カ月後ぐらいの慢性期に起こる慢性水頭症(正常圧水頭症)の2種類があります。

 

水頭症の治療法としては次のようなものがあります。

  • 急性水頭症の場合は、「脳室ドレナ上ン」を脳室内に留置し、たまった髄液を体外に排出します。
  •  

  • 慢性の水頭症の場合は、たまった髄液を脳以外の体内に排出する「シャント術」を行います。

 

 

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