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脳梗塞の急性期では脳細胞の損傷を最小限に抑える治療を行います

脳梗塞では、超急性期の治療につづいて、急性期治療を行います。急性期の治療は薬物治療が中心となります。

 

具体的には、新たな血栓ができないようにする「抗血栓療法」や、脳を保護する「脳保護療法」、脳の浮腫(むくみ)を抑える「抗浮腫療法」など、脳の損傷を最小限に抑える治療を早急に行います。また、血流の改善を目的として「血液希釈療法」が行われることもあります。

 

さまざまな脳梗塞の急性期の薬物治療

抗血小板療法

発症後48時間〜5日以内に、血栓が大きくなったり、新たな血栓ができるのを抑える抗血栓療法を行います。抗血栓療法には、「抗血小板療法」と「抗凝固療法」の2.があります。

 

どちらの療法も、すでにできてしまった血栓をとかすことはできませんが、症状の悪化や再発を防ぐ効果が期待できます。ただし、血が止まりにくくなるので、出血をともなう病気(脳出血や消化管出血など)のあ
る人には使うことができません。

 

抗血小板療法は、血小板が活性化して固まる働きを抑える治療法で、心原性脳塞栓症以外の脳梗塞が対象です。薬としては、経口薬のアスピリンや、点滴薬のオザグレルナトリウムを使います。

 

 

アスピリン(商品名:ハイアスピリンなど)は、解熱鎮痛剤としてよく知られている薬ですが、血小板の凝集を抑える作用もあり、抗血小板薬の中では現在もっともよく使われている薬です。発症後48時間以内に
内服すれば、ある程度の効果が期待できます。

 

ただ、アスピリンには胃痛など消化器症状の副作用のほか、喘息発作を起こすおそれもあるので、アレルギー体質の人や、もともと喘息のある人には注意が必要です。

 

また、大きすぎる脳梗塞や出血性梗塞(梗塞巣の中に出血をともなう状態)の場合は、投与しないか、中止が望ましいとされます。最近は、アスピリン以外の経口抗血小板薬も急性期から投与されることが多くなっています。

 

 

オザグレルナトリウム(商品名:カタクロット、キサンボン)は、血液を固まりにくくするとともに、脳の血管を広げて血流を増やす作用があります。また、手足などの運動障害を改善する効果もあり、急性期の治療薬としてよく使われます。オザグレルナトリウムは、発症後5日以内のアテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞が適応です。特に小さなラクナ梗塞に効果があります。

 

抗凝固療法

脳梗塞の原因となる血栓には、血小板が凝集してできた「血小板血栓」と、血液中にあるフィブリノーゲンが固形成分のフィブリンに変わることで形成される「フィブリン血栓」があります。抗凝固療法は、そのフ
ィブリンの形成を防ぎ、血液を固まりにくくする治療法です。

 

急性期の抗凝固薬として使われる薬には、アルガトロバンやヘパリンナトリウムがあります。ともに点滴で投与されます。

 

アルガトロバン(商品名‥ノバスタン、スロンノン)は、血液の凝固にかかわる酵素であるトロンビンを阻害する薬(選択的トロンビン阻害薬)です。発症後48時間以内で、梗塞巣の大きさが1.5cmを超すようなアテローム血栓性脳梗塞が適応です。

 

ヘパリンナトリウム(商品名:ヘパリンナトリウム、ノボーヘパリンなど)は血液中の凝固阻害因子に結びついてその働きを強める性質があり、フィブリンの凝固を抑えます。主に心原性脳塞栓症の場合や早期の再発予防のために使われます。

 

抗凝固薬には出血が起きやすいという副作用があるため、出血性梗塞や消化管からの出血、皮下出血などに注意しながら用います。

 

脳保護療法

脳に梗塞が起こると、直後から活性酸素(フリーラジカル)が発生し脳細胞をさらに傷つけ、別の血栓をつくるとされています。脳保護療法は、この活性酸素を除去し、梗塞巣周辺のまだ死んでいない細胞(ペナンブラ)を救う治療法です。

 

脳保護療法で用いられるのはエダラボン(商品名:ラジカット)という薬で、点滴で投与されます。エダラボンには活性酸素を無害化する働きがあります。

 

エダラボンは、一般に発症後24時間以内に使いますが、3時間以内であれば、さらに高い効果が得られます。エダラボンは、どのタイプの脳梗塞にも使うことができますが、副作用として急性腎不全を起こすことがあるので、腎臓に病気がある人には使えません。

 

抗浮腫療法

脳梗塞になると、血管が詰まった場所、あるいはそのまわりに水分がたまり、むくみます。これを脳浮腫といいます。脳浮腫は、通常、発症後1〜2日後に梗塞が起きた部分のまわりがむくみはじめ、48〜72時間くらいでピークに達します。

 

むくみがひどい場合は、梗塞巣の影響を受けていない部位まで圧迫され、ダメージがさらに広がります。また、脳がむくんではれると、頭蓋内圧が高まり、脳ヘルニアなどを起こして非
常に危険な状態となります。急性期の死亡原因の多くは、こうした頭蓋内圧の亢進によるものです。

 

 

抗浮腫療法は、脳梗塞によって起こる脳のむくみを抑える治療方法です。抗浮腫療法では、濃グリセリン(商品名:グリセオールなど)やD−マンニトール(商品名:マンニツトール)などの利尿薬を点滴によって体内へ入れ、脳の余分な水分を排出することで、むくみやはれを改善します。

 

抗浮腫療法は、梗塞巣が比較的大きなアテローム血栓性脳梗塞や心原性脳塞栓症で行われることが多い治療法で、特に重症な人に効果があることがわかっています。

 

抗浮腫療法は、心臓や腎臓に大きな負担をかけるため、心臓や腎臓に病気がある人や高齢者には行えない場合があります。また、糖尿病がある人は高血糖を起こすことがあるので、注意が必要です。

 

脳ヘルニア

大脳や小脳は、上部と左右をかたい頭蓋骨で囲まれています。そのため、出血や血腫によって脳の体積が増すと、頭蓋内圧が高まり、脳組織の一部が通常とは異なる位置に押し出されます。

 

押し出された脳は、脳深部にある生命維持中枢(脳幹)を圧迫し、重い意識障害や呼吸困難、瞳孔散大などを引き起こします。梗塞巣が大きく症状の進行が速い心原性脳塞栓症では、脳ヘルニアが直接の死因となることもあります。

 

脳ヘルニアで瞳孔異常の初期症状が見られたら、治療は一刻を争います。原因に対する治療が優先され、血腫があれば開頭血腫除去術が行われます。血腫がないか、少量の場合は手術の効果が低いため、多くは薬物療法が選択されます。

 

血液希釈療法

血液中の水分が少なくなって血液の粘度が増すと、血流が悪くなり、脳梗塞の発症や悪化につながります。血液希釈療法は、薬によって血液中の水分(血漿)を増やして血流の改善をはかる治療法です。使われる薬は低分子デキストランという血漿増量薬で、点滴で投与します。

 

血液希釈療法の問題点としては、まだ科学的な根拠が明確でないという点があげられます。

 

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